ラ・マンチャの男  2012

ミュージカル 「ラ・マンチャの男」がもうすぐ始まる!

 

今年で1200回公演を突破する。

 

主人公を演じるのは、

歌舞伎役者の松本幸四郎。

アルドンサ/ドルシネア役は、今回も松たか子。

 

 

数年前松たか子を観るために、

友人と帝国劇場まで出かけた。

清濁を激しく演じきる彼女の気迫ある演技は、

初めて観る私を唖然とさせた。

梨園のお嬢様というイメージは、

そこにはまったくなかったのだ。

 

 

それ以上に度肝を抜かされたのは、

彼女の父松本幸四郎氏であった。

 

熟練した演技。間の完全さ、抑揚の技巧。

詳しくない私にはこれ以上の

説明の言葉が見当たらないが、

とにかく凄みのある舞台だった。

 

 

 

それ以来すっかり幸四郎氏のフアンになり、

数年後、古典芸能フアンの知人と、

名古屋御園座に勧進帳の舞台を観に行った。

もちろん富樫(トガシ)を演じるのは、

長男 市川染五郎である。

 

 

この息子もすごい!

 

 

 

数ヶ月後、

この息子が主催する舞の会の発表を

国立劇場まで観に行った。

幸四郎氏も松たか子も出演していた。

 

完成された「型」の美しさ。

一人舞い始めた染五郎の舞に、

いつしか心を奪われていく。

しばらくすると、何かが彼と二重になって見えてくるという

不思議な感覚を覚え始める。

なんだろうとその影をじっと見た。

 

舞台に上がっていない幸四郎氏の姿ではないか。

錯覚なのだが、

二人が重なり合って舞っているように見えたのだ。

 

 

師匠から弟子に、型を「」り、

いつしか型を「」り出で、

師匠からも「」れて、

染五郎の世界が完結されるのであろう。

その道は、遠く果てしないかもしれない。

これが歌舞伎の伝統のようだ。

だからこそ残り続け、伝統ならしめる。

 

「伝統」とは、魂の伝承であり、

形骸化した型ではない。

また遺伝子でもない。

それなら、魂があるかないかはどうして分かるのか。

「夢を叶えようとする思いの強さ」で計れるのではないだろうか。

思いの強さは努力となって表れるし、気迫のような何ものかで表れる。

 

歌舞伎の舞台に女性は上がれなくなったが、

松たか子もまた父の伝統を追い続けているのだと思う。